20200903 963の新譜

963の新譜『tick tock』を繰り返し聴いていた。963は福岡のローカルアイドルとのことだった。私がもし作る側だったらこういうものを作りたいと思う。『tick tock』には『GAME』という曲が入っていてこういうものを作れたら格好良いだろうと思う。この曲はabelestという人?が作っているらしい。abelestという人は中村弘二の新譜『epitaph』に入っている『no face』という曲でラップをしていた。『no face』という曲は本当に素晴らしいもので新しいノイズとカオスといったものが最新鋭かつ美しい表現であらわされており本当に黄金のような音楽だ。963というグループはその作品のどれもが素晴らしいように思われる。音楽を言葉で説明するのは難しく、たとえばローファイ/チルアウト/ヒップホップという言葉で963を説明してみても言葉の意味や文脈がわからなければ伝わらないが、しかしそれは音楽に限ったことではないかもしれない。しかし何か、r.e.m.や963やノーベンバーズやヨハン・ヨハンソンを聴いたときに感じるそれぞれの「良さ」と呼ぶべきものを、何とかそれぞれの言い方のようなもので語りたいという欲望があるが、やはり我々は〈壁〉の向こうに行きたいのかもしれない。

その〈壁〉は何というか、「私」と「あなた」を分断するA.T.フィールドのことでもあり、ウェスタロスの北部に広がる「生」と「死」を分断する氷の防壁(200m×480km)のことでもあり、パラディ島を覆い囲うユミルの民の三重の〈壁〉のことでもあり、またその〈壁〉が広義の意味において、パラディ島の先、海を越えた向こうの大陸にも幾重にも広がっていたという事実をエレン・イェーガーら調査兵団の変革者たちが知ったとき、われわれの復讐心と好奇心はついに悪魔に切り落とされたかのように“進撃”するしかなくなるのかもしれない。そしてまた「私」という一個のボディこそが〈壁〉であることを知ったとき、何よりもそれを名付ける「言葉」こそがはじめから〈壁〉であったことを知ったとき、われわれはついに認識の限界の向こうへ溶け出したくなるであろう。

音楽の中にはそういった〈壁〉の向こうへ至る何かしらの鍵の断片がある。そしてまたその鍵の断片を知覚するためには、たとえば963のことをローファイ/チルアウト/ヒップホップと説明するのではまったく足りないであろう。しかし拍子や音調や音色の周波数などを分析したり批評することは、あくまで音楽学といったデータベース的な情報の域を出ないのではないかという気がするが、しかしどんな学問や理論も必ず〈壁〉の向こうへ至る手がかりになるであろう。

自分は何を言っているんだろう。963の『GAME』という曲はきわめて不気味な音色をしており、こういった不穏で不協和的なものが作れたら格好良いだろう。あらゆる前線アーティストの楽曲と比べても新種の光のようなものを感じることだろう。963は東京と福岡のラフェイスという名前の芸能事務所に所属しているアイドルグループであるとのことだった。ラフェイスという事務所はナインティナイン矢部浩之の兄である矢部美幸が社長で従業員は50人ほどであるとのことだった。