20200725引用と記録④

性の何と性的なことだろう。〈アリー〉という名を名乗り、ラニスター家の追っ手から逃れるために少年に扮していたアリア・スタークが、その正体をはじめて信頼できる友に明かすシーンは、

 

氷と炎の歌からの引用】

「アリア」彼女は目を上げて彼を見た。「わたしの名前はアリア。スターク家の者だ」

「なんだって……」一瞬かれは声が出なかった。「〈王の手〉はスタークという名前だった。謀叛人として殺された人だ」

「絶対、謀反人ではない。あの人はわたしの父だ」

ジェンドリーは目を丸くした。「だから、おまえは……」

彼女はうなずいた。「ヨーレンはわたしをウィンターフェル城に連れ帰ってくれるはずだった」

「それ……では、おまえは高貴な生まれだ……レ、レディになる人だ……」

アリアはうつむいて、ぼろぼろの衣服と、ひび割れてたこだらけになった素足を見た。爪には垢がつまっていた。肘にはかさぶた、手には引っかき傷。“わたしを見ても、セプタ・モーデインはきっとわたしだとわからないだろう。サンサならわかっても知らないふりをするだろう”

「母はレディだった。姉も。でも、わたしは絶対そうじゃなかった」「いや、そうだった。おまえは貴族の娘で、城に住んでいた。違うか? そして、おまえ……ちくしょう、わからなかったなあ……」ジェンドリーは突然不安そうな、ほとんど怖がっているような顔になった。「チンボのことなんか、いうんじゃなかった。それに、おまえの前で小便もしていた。なにもかも、も……申しわけない、お嬢さま」

「そんな言い方やめて!」アリアは歯の間からいった。こいつ、わたしをからかっているのだろうか?

「礼儀は心得ていますよ、お嬢さま」ジェンドリーは相変わらず頑固にいった。高貴なお嬢さまがお父上に連れられて店に来ると、親方はいつもおれにいった。膝を屈めて、話しかけられたときだけ口をきけ。そして、お嬢さまと呼べと」

「おまえがお嬢さまと呼びはじめれば、ホット・パイだって気がつくだろう。そして、今までどおり、わたしの前で小便をした方がいい」

「おおせのままに、お嬢さま」

アリアは両手で彼の胸を叩いた。かれは石につまずいて、どしんとしりもちをついた。

「なんたる貴族の娘さんだ?」かれは笑ってそういった。

「こんな娘さ」彼女はかれの脇腹を蹴った。だが、かれはますます笑うばかりだった。

「好きなだけ笑うがいい。わたしは村に誰がいるか見にいくからね」

 

何と読みやすいのだろう。読みやすいと……。性の何と性的なことだろう。アリアは少年に扮していた際、正体を見破られぬよう意識して自分を“おれ”と呼んでいた……しかしここではあたふたして自分を“わたし”と呼んでしまう……性とは一体……しかし、途端に裏返るように男が女になったり、女が男になったりすることは、非常に性的な感じがする。それは当人にコントロールできないことが重要であろう。ふと男になってしまう女、女になってしまう男、また思いもよらず男になってしまう男、またここでのアリア・スタークのように、うっかり女になってしまう女。昨日は4時半に寝た。8時半に起きた。犬の絵が書いてある書物を読んだものだ。表紙に犬の絵が書いてあった。本屋で平積みされてあった。〈直木賞〉〈受賞〉という文字が書いてあった。1500円ほどで買った。値段が1500円だった。金を1500円支払った。中身は馬鹿みたいなことが書いてあった。カスだった。ほかに無意味な映画や千鳥の『相席食堂』などを見た。新しい音楽など聴いた。少し休もうと思って18時半に横になったら9時半に目が覚めた。15時間が経過していた。シオン・グレイジョイの姉は書物の中ではアシャという名で書かれており、彼のことを「弟くん」という呼び方で呼んでいる。アシャ・グレイジョイは恐ろしく魅力的で、可憐な戦士だ。俺は何をしているんだろう。だが、読み終わりたくないなあ。七王国の物語の中では、多くの登場人物がこの喋り方をしている。「◯◯だったらなあ」「◯◯だなあ」というのは書き言葉でしか醸し出せない風情というか、執拗な行間といったものを感じる。

 

 

 

 

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