20200315炎と血

数字と針と盤の中にそれがあるように見えても「時間」と「時計」は似て非なるものであると思う。R.E.M.のMonsterというアルバムのなんと深く染み入ることか・この枯葉剤的土壌に根を張った私の青春・人生・時間・このアルバムのなんと懐かしいことか・what's the frequency,kenneth?のイントロの何たるエレキテルなことか・このカラッカラな音色であらゆる情感を焼き尽くしてほしい・この世のあらゆる意味を「?」マークで埋め尽くしてほしい・という青少年的な妄念に取り憑かれるが本当は自分がどう思っているかわからない・しかしアメリカのダン・ラザーというキャスターを襲った暴漢の言葉「周波数は何だ?ケネス!」わけがわからない・わけがわからない無意味なものしか自分にとって意味がない気がする・マイケルスタイプいわく「ほとんどが暴力とセックスの曲だよ」このMonsterというアルバムに満ちてる人間のカラカラ感・渇いた可笑しさ面白さ悲しさかっこよさが本当に素晴らしい冗談ではなく・まるで炎と血の宿命を持って権力の輪を“破壊する”と豪語した幼い女王デナーリス・ターガリエンのようではないか。女王“カリーシ”の何たる強さ、あの時代のドラゴンは重火器らすけ。銃はおろか馬と車輪以外の動力もないウェスタロスの一時代において、火を吹き空を駆けるドラゴンは「航空戦」という新たな概念を戦場に持ち込んだ技術特異的な暴力兵器であった。そう考えるとテクノロジーというものは本当に面白いし素晴らしい。彼女が三体のドラゴンを手繰り鉄の玉座の奪還と権力の輪の破壊を達成すべく万の軍勢をぶち進めていたあの時代・わずかな時代・短い時代、ウェスタロスの武器は木鉄工の剣と弓しかなかったではないか。通信手段は使い鴉しかなかった。それも現在から数えた遠い(もしくは近い)未来(または過去)の限定された一時代の物語に過ぎず、現に一万二千年前そこには国はおろか人間すらいなかったではないか。ウェスタロスに七王国が成立したのはわずか千年前の出来事に過ぎず、それが三体のドラゴンを手繰るエイゴン・ターガリエンによって統一されたのはたった三百年前の出来事ではないか。それからターガリエン家の王朝が続いたが、先のエダード公らの反乱により狂王エイリスを最後とし本家の支配が途絶えたのは伝聞久しい。それも十五年前か二十年前か、ものすごく最近の出来事なのがやばい。そして唯一生き残ったターガリエン家の末裔である少女デナーリスは三体のドラゴンと万の軍勢を率いて血塗られた歴史をリピートすべく北上する。しかし彼女の欲望はもっと純真かつ狂っている。「私が願えば叶うのよ」。そして王国の成立より千年以上続く人間世界の支配と暴力の歯車を、それよりもっと巨大な炎と血の暴力でもって完全にぶち壊すことを目的として進軍する。彼女は非常に危険なカリスマ性がある。たぶん暴力を暴力で終わらせようとすることはものすごく大きな矛盾を孕んでる。だがそれも歴史のほんのわずかなあいだ・短い時代の出来事に過ぎぬ。ウェスタロスには暦が存在するのかどうか知らない、わからない。しかしこの国の人工的なテクノロジーはまだまだ先に進めそうに思える。この世界はきわめて未発達で真新しいものに過ぎぬ。人間のカラカラ感・渇いた面白さはまだまだもっと遠くへ行ける・かつ素晴らしく危険なところを突っ切って行けると思われる。