20190214 月

何かを見ることは本当に素晴らしい。映画は本当に面白い。夜になると眠くなる。主観的なカメラのショット、見ることは素晴らしい。映画のすべてのシーンはカメラで撮られてつくられている。カメラのショットは断片だがしかるべき順序に繋ぎ合わせられると動的で線的な時間になる。見ることは繋がっている。私は私の目はカメラだが私が見ているものは断片的なショットではないと誰が言えるか。カメラの外にまた現実があるように私の外にも現実がある。語られる物語はそれが話し言葉であろうと書き言葉であろうと描かれたものであろうと刻まれたもので編まれたものであろうとおそらく本当に起きている。起きていないと誰が言えるか。主観的なカメラ、疑似体験と称されるのはファーストマンという映画だったがそれよりも、あれは映画とは何かと色々考える。しかしまだ一回しか見ていない。わからない。見たあと新宿から歩きながら帰った。私は歩くと手持ちのカメラが身体の振動によって揺れるように歩くたびに視界が揺れて私は前に進んでおる。なぜ俺はこれを考えているのか。と思いながら歩いた。見えているものはさっきの映画の延長線上だった。“月への到達という人類の偉業をあくまで個人の体験として描いた”とクリストファーノーランがこの映画に対して言っていたインタビューを帰ってから読んだ。だから主観的なカメラのショットはそれを見る者が体験するがごとく、まるでエンドロールが去り場内に明かりが灯されてもまだそれが続いているように思われるのは、しかしファーストマンは本当にそれだけの映画だったのか? まったくわからない。白状すれば面白かったのかさえもわからない。見たあと歩きながら考えた。自問自答した。良かったのか?悪かったのか?良いか悪いかで問われたら悪い映画だったのではないかと自分はたしかに思った。作劇としてあの要素は必要だったのかとか映像としてあのシーンは正解だったのかとかいう偉そうなことを考えた。しかし私は考えた。色々と考えようにも一度しか見ていないのではまったくわからない。しかし監督は決して人間の知覚とは…や認識とは…や現実とは…や体験とは…を描こうとしたわけではないような気はする。しかし映画とは何かということはララランドのときでもずっと執拗に考え続けられていたような気はする。しかしララランドとはまさにハリウッド式君の名はなんだと私は最初に見たときから、その考えが拭えないのはどうしてだろう。か。しかし、でも、ぜったい両者はなんというかおそろしく似ている。日本アニメをハリウッド実写に反転というか、ここが譲れなくて、転換したのではなくどう見ても反転したように見える。それはラストシーンのすべてからはじまり、物語の遡及的再構築というか可能世界が虚構と現実の中へ分岐していく様というか、ストーリーの見てくれも似ているし中身も似ている気がするが君の名は。はアニメのアニメだったのに対してララランドは映画の映画だったという考えが安易だろうが自分にはある。それがファーストマンになるとやはり人は「ララランドからのファーストマン」というように比べて並べて見られずにはいられない。ロックなどでもこのセカンドからこの3枚目なのだという聴き方はどうしても避けられない。なぜだ。とにかくファーストマンとは何だったのかまだ全然わからない。たしかに映画だった。「たしかに映画だった」って、それは馬鹿馬鹿しい言い回しの世界ではなくあれはほんとうに確実にひとつの映画という芸術表現であったと言い切れる。ララランドの次を撮るのだという作り手の意識的なものは確実にあった。しかし私がそう言えるのは、単に私がこの映画の属する外的な文脈をメディアの情報として知っているからに過ぎないのであって、たとえばララランドを見ていなかったり監督名を知らされずにこの映画を見た場合は、いま自分が言ったような作者の向上心や実験精神のようなものはまったくわからなかった。と思う。盲目。だが仮に何も知らされずに見たとしても同じようにこの映画は何だったんだということを私は同じようにずっと考え続けていると思われる。だからいま自分ではこの映画は面白いとも不思議だとも革新的だともつまらないとも言えぬ。もう一度見てからおそらく何かがわかる。いや言おうと思えば何でも言える。ラストシーンが何を意味していたか、どこが映画の肝だったか、良かったところはどこだったか、不審に思ったところはどこだったか、しかしそんなことを言っても自分ではまったく意味がない。ただここまで心残りのする映画は初めて見たかもしれなかった。何かを見る、ことはすばらしくて、それがずっと続いているカメラに他ならない。得体の知れないもやもや、を感じる。月。そうだ月だ。なぜ月を撮った。月を撮ったのではない。月へ行った男をただ描いた。月へ行ったなんて信じられることか。だが月だ。それをテーマに選んだのはなぜだ。一方アクアマンは何だったのか。アクアマンはわけがわからない。