①〜⑥

①イー・ボウ・ザ・レター

恐怖はアルミニウムの味がする。というのはマイケルスタイプがインタビューでも言ってた。何かに恐れると口の中に鉄っぽい味がひろがるのが、アルミニウムの味だと言っていた。しかしこれは恐怖についての歌とは言えず、歌詞は誰かに宛てた手紙の形式をとっている、と言って歌詞なんてどうでもいいがR.E.M.はだいたいみんな歌詞を聴く。「歌詞を聴く」というのは、R.E.M.のボーカルの声と言葉はまさに楽器そのものであり、あれは舌と喉と呼吸とまなざしで構成された、と書くと文学的虚飾とでもいおうか、とにかくR.E.M.のことを書くのにR.E.M.の歌詞それ自体が私の書く文より優れているのにこっちが文学的にやろうとしても無駄というか邪魔だと言える。しかしイーボウザレターという曲はR.E.M.というバンドの極地である、という意見ではるか遠いむかし私と小澤さんの意見は一致した。そのころ我々の心はたしかにR.E.M.の曲のなかにあった。今は私の心だけがある。小澤のはドブに移動した。

②アンダートウ

意味は「引き波」であり高校生の頃めちゃくちゃかっこいいと思ってこの曲を聴きまくっていた。実は同じ理由で小澤さんも聴いていたんだった気がする。いずれにせよ①も②も同じアルバムの曲でこればっかり高校生のとき聴いていたが単なる偶然か、今すべてを聴きかえしてみてもこのアルバムが一番かっこいいというのが自明の理、しかしR.E.M.はオートマチックフォーザピープルというアルバムでものすごい評価され、それまでも評価されていたバンドだったが異常な名声を獲得した。たしかカートコバーンが死ぬ前聴いていたアルバムがそれだったという風評被害があった。しかしR.E.M.はこのアルバムを出したあとに「もっとだ」と言った。もっとだとは言ってないが「とにかく猥雑で一次元的で、めちゃくちゃなものにしたかったんだ」とインタビューでマイケルスタイプは語った。「マーシャルのアンプに繋いでエフェクターは無しさ。それで思い切りノブを回すんだ。歪ませてトレモロをかけるのさ」とギターのピーターバックは言っていた。私は高校生のときそのかっこよさに気づかなかったが、R.E.M.は次作でいきなり方向転換した。本人たちは原点回帰と言ったが、とにかくポップさを排除してメロディの良さは以前のまま、全曲一色オレンジのモンスターというアルバムをつくった。全曲一色というのは、すべての曲で同じギターの同じアンプでただノブを全開にしてるだけで同じコードでも同じテンポでも同じ曲調でも同じ音色でも気にしない、という極限まで退屈さを先鋭化したロックアルバムをつくり、これはいまでもブックオフにたくさん置いてある。必ず置いてある。だから小澤も私もブックオフで100円くらいで買った。だがそのかっこよさがそのときはわからなかった。今ならわかる。それが一番かっこいいアルバムだった。そしてその次に発表したのがモンスターと同じスタイルの延長線上にあるこの①と②が入ってるアルバムだった。

 

③周波数は何だ?ケネス

というタイトルの曲はモンスターというアルバムの一曲目で、今ではこれがR.E.M.で一番かっこいい曲だということがわかる。まさにこれが、ただアンプのみで歪ませた猥雑で一次元的でめちゃくちゃなサウンドというものだ。とは言っても明らかにギターソロのところはエフェクターかましているのではないか。とずっと思ってるが「R.E.M.とは、一部が嘘で、一部が炎で、一部が真実で、一部がゴミなのさ」とピーターバックが言っていたがかっこつけている。つまりアンプに繋いだ「だけ」というのはその一部の嘘に属しているようだ。

 

④クラッシュウィズザアイライナー

⑤アイトゥックユアネーム

二曲はまったく同じ曲だと言える。というのは聴けばわかる。何が違うんだと思う。だがわざと同じアルバムに入れて馬鹿にしてるのがかっこいい。

 

⑥ピルグラミッジ

というのは1枚目の暗いアルバムの二曲目ではじめて私が聴いたアルバムでブックオフで買った。それでこの二曲目を何度も聴いていて言葉にできないくらいうずうずしていた。つまり歌詞がブリーチみたいでかっこよかった。「君の憎しみは切り取られて遥か彼方。君の運は双頭の牛」