20190122思考力の低下

私はもう何も恐れなかった。おもっていたことがほんとうになった。私は外の世界をまっしろで美しく病的に清潔で、疑惑も恐怖もない完ぺきな世界・ピラミッドだと思っていた。天国はピラミッドのように完ぺきで、地獄は悪魔のクロームのメッキであった。月日と一日との制御が効かなくなったとき焦りも壊れもしなかった。私は日の光と月とを重ねていた。きのうあそこにあったものが今はここにある。「朝でふ」「夜でふ」「朝でふ」「夜でふ」「朝でふ」「夜でふ」「朝でふ」「夜でふ」それはなんと不思議なことかと思った。私は群馬から埼玉・千葉の成田・東京都心、電車と足で往来した。そのあいだ頭上はずっとまぶしかった。たくさんの建物はそびえ立っていた。それは完ぺきな形に思えた。重力という目に見えない力、物と質量の理、地上の足、そして目、というのは見上げる人間の願いの目であった。建築物は必ず地上から上へ向かう。塔から平屋・掘建て小屋・墓・そしてピラミッドまで、地上に“立つ”ということは見上げる人間の願いの目をこれ以上ないかたちであらわしている。なんと頭上の青きことか。あれは絵かと私は遠い昔祖父に問うた。雲は白か。青いのは画板か。「もう何でもござれだ」と齢66の男、彼は言った。「楽しくなってきたぜ」「地獄」と齢28のヨウキャな彼は言った。地獄はクロームのメッキ。「怒りに身を任せてる?」とトムヨーク好きの部長は私に聞いた。怒ってないと私は答えた。自分は彼を裁こうとしていた。殺そうとしていた。でもそれは違っていたのだと言った。間違っていたのではなく違っていた。私はただここにいて、それが嫌になったら気ままにどこかへ行けばいいというそれだけの話だった。「俺も嫌なら辞めるだけよ」と齢66の彼は言った。どうやらおもっていたことはほんとうになったようだ。ハンドルを手放すには頃合だった。もしかしたらすべての建造物はやがて崩れ去る。浄化以外のなにものでもないか。なんと不思議なことか