20181013フッ。戦国か。

そして目が覚めた。目がさめる前と私は同じ場所にいた。といえる。つまり布団の上であった。粘土細工の人形のクレイアニメみたいな感じで起き上がった。泥を引きずる感じでシャワーを浴びにいって歯を磨いて着替えてカバンを背負って家を出た。また大宮駅に来た。タクシーに乗った。この前のアメトークアイクぬわらがタクシーを止めるとき指笛をピューイッ!と吹いてから「タァクスィッ!!」と言うのを思い出して「それじゃ止まらへんやん、、」と宮迫が笑いながら言ったのがたしかにと思った。「こっち向かってなんか叫んでるだけやで、、」と言っててたしかにと思った。それでタクシーに乗った。降りた。職人の車の止まってるパーキングエリアまでいって荷物を運ぶのを手伝って無事三ヶ所取り付けが終わった。昼には終わった。それで昨日のことを思い出す。昨日私はアルコールに頭が浸かって眠る前に日記を書いた。いま思い出すともっと色んなことがあった。「俺は行ったことのない場所に行ってみてぇんだ」と彼・齢66の上司は言った。「よくかあちゃんと旅行に行くんだけどよ、」彼は自分の奥さんのことをかあちゃんと呼ぶのを隠しもせずに言うのが私の胸に熱く、遠い雨というものを降らすと言えなくもない。「かあちゃんなんかまた温泉行きたいだの、あそこ行きたいだの、俺はヤダよーッ!て言うんだよ!なんでおんなじ場所に行くんだよ!山だってなんだって、知らない場所に行きてえんだよ!」「そうだ、そうですよ!知らない場所を知るために山に登る、知らないことを知るために本を読む!同じですよ!俺は知らないことを知りたいんですよ!」「ああ。」文字に起こすとハートフルな会話になるかもしれない実際はもっとハートフルだったかもしれない。カウンターに並んで私たちの齢は40年以上離れていてグラントリノ的な映画のポスターみたいだったかもしれない。あとは何を言っていたか。「人が付いてくる奴になれ」と言われた。対魏戦のときに敵地の中で築城という戦法を使った王翦に対して、廉頗大将軍が言った「歪んでおる」という発言を思い出した。「たしかに飛び抜けておる。しかしこれはだいぶ違うであろう王翦。一副将に過ぎぬお前は、あろうことか自身の存在をこの戦の第一と捉えておる。自身を第一とする将は信が置けぬのだ」と言うシーンを思い出させる。王翦将軍は桓騎将軍と並んで秦国随一の曲者であり、自分のことを王だと思っている。彼は国家レベルの危険人物としてこれまで六大将軍のノミネートから除外されてきた。味方を囮に使ったり敵地に築城したり、味方も敵も同じ死の天秤にかけるような異様な作戦を窮地にぶち込んだり、しかし彼の軍略は必ず勝つ。彼は勝てぬと判断した戦はあっさりと退く。戦に対してどこまでも冷徹であり、絆や希望に対して無頓着な、不気味な仮面の下に神経系の途切れたつめたい眼がある。桓騎将軍も王翦将軍も、軍や国家が律する正規のルールから逸脱する破滅的で前衛的な危険人物であるが、こと戦に限っては彼らは並外れた才能を有する。しかし彼らは本当の意味での英雄になることはできない。ということを廉頗大将軍は言ったのだった。それは「歪んでいる」からだと。そして同じ意味のことを齢66の上司も言った。役職にこだわるやつ、嘘をつくやつ、卑怯なやり方をするやつ、「頭にくるぜ」と彼は言った。私はわかった。ストンと落ちるように理解した。こういう人がいるな、と思った。こういう人がいるぞ、村岡。清水。彼は会計のときに誰かの名刺を出して「効くよね?」と店員に言ったら店員がハッとして「ははっ!」と言って割引になった。その居酒屋の親会社の人と友達だから名刺を見せると割引になるらしい。いろんな人の名刺があって、「これは裁判官だな!こっちは弁護士だ!腕がいいんだ!」と言っていて「裁判したんですか?」と言ったら「ああ!勝った!」と言ってやっぱり勝ったんだと思った。しかし王翦将軍は、私にはわかる。ただの危険人物ではない。彼は何か、胸に熱いものを秘めている。全滅か勝利かの二択にかけ、趙国へと打って出た秦軍の総大将を担う彼は、そのなかで騎馬隊からある伝令を受け取る。「燕国が趙国へ攻め入った」とその伝令を受けた王翦の眼にはじめて火のようなものがちらつき「フッ。戦国か」と言うかっこいいシーンだった。