20180926②孤独

結婚できない男というドラマをユーチューブで見て止まらなくなって懐かしくて小学生のときなぜか見てたがまったくわからず食べ物を食べるシーンだけおいしそうだから見てたが今見るとものすごくおもしろくて笑うところや感動するところがたくさんある。キュウリをポケットから出してヒュッと投げるシーンやキッチンの汚れと阿部寛の寄りのショットが交互に繰り返されるシーンで一人で笑ってしまった。花火の回で火花のついたカクテルが出てきて「イヤミですか」と小さくつぶやくシーンはたぶんカメラのテンポと表情と声音とセリフがすごいかみ合わさって上手かった。屋上の給水タンクの上に座椅子と双眼鏡を持って楽しそうに花火を見る阿部寛を見て「どうやって登ったの」と夏川結衣がつぶやくシーンで感心した。なぜこんなに面白いのかというとやっぱりキャラクターを作るのがうまいのか、おもしろいドラマや映画やアニメや漫画はぜんぶキャラクターが立ってる。仮面ライダーエグゼイドはすごい。仮面ライダークウガもすごい。話じゃなくて、話もすごいがキャラクターがすごい。どうやってAとBの会話が見てて楽しいものになるのか、という問題にいろんな形で答えている。カルテットというドラマはものすごくおもしろくて驚いた。なんだこれはと思って一気に見てやっぱり吉岡里帆が一番見てて楽しそうだった。エグゼイドのゲームマスターもそうだが、トリックスターの役はいちばん演じてて楽しいはずだと思う。高橋一生から松たか子の持つバイオリンの値段を聞いた吉岡里帆はそれを盗むためにあの別荘に忍び込むことを思いつき、高橋一生が雪山で斜面から転がり落ちた隙に「ちょっと用事を思い出しました!」と言って彼の車をうばって「ははははは!」と爆走するがそれが演じててものすごく楽しそうに見える。それで四人の住む別荘に忍び込んだところ、そこで宮藤官九郎と鉢合わせて「え?え?誰ですかあなた」「え?え?」「ちょっと!それはマキちゃんのバイオリンだろ!」「え?え?」「かえせよ!マキちゃんのだぞ!マキちゃんの」「え?え?」「かえせ!かえせ!」「何ですか!何ですか!」と言って「わー!」と言ってベランダから落ちる一連のシーンが演じててものすごく楽しそうに見える。「大好き大好き大好き殺したいって!」と言うところはすごい楽しそうに見える。「あ、そうですか?はーい」と言ってものすごい乱暴にハイヒールをぶんどるところがすごい楽しそうに見える。カルテットは1話にしか出てこないがイッセー尾形の演技がすごい楽しそうに見える。沈黙という映画でもすごい演技だった。すごい演技って何なのか。別に激しく叫ぶとか泣くとかではなく、本当にいそうだと思わせるのもすごいが、それより演技のすごさは、絵でいうタッチや音楽でいう音のフェティシズムや文学でいう文体みたいな、やっぱり唯物的なビートを想起させるものに依っているんじゃないか。高橋一生は「いかにも言いたいことがありそうな顔」をやって「そして言わない」みたいなことをやる。というのは気のせいか。池松壮亮はカルテット関係ないけど、「ふつうに喋ってる人」という感じなのを、それ自体を意識してふつうに喋ろうと演じてるからあんなに独特な演技になるのではないか。つまり自己像の絶え間ないハウリングだ。吉岡里帆松たか子満島ひかりはもっと狂っていてそれが女性的にもみえる。生々しいというか自己像が一方通行的でそれがあの良さに繋がる気もする。なにを話していたのか。結婚できない男だったか。夏川結衣は結婚したい。ものすごくかわいい。あれこそ演技と思えないくらい役と同化しているというかその人そのものというふうに見える。というか結婚できない男というドラマは全員演技をしているふうに見えないのが驚異的な安心感と快感があって、カルテットは真逆で全員「演技の演技」のように見えるのが快感で、ゴンゾウというドラマは単にめちゃくちゃおもしろい。どれだけすすめてもわたしの周りでだれか見た人がいるのかわからない。ゴンゾウPTSDの元捜査一課の刑事がバイオリニスト殺人事件というひとつの事件に巻き込まれ、やがて事件の真実へと自身の過去へと向き合っていくストーリーだがピラミッドのように美しい設計のストーリーで何一つ無駄なところがなくラストへの盛り上がりがすごい。そしてかっこいい。何人もキャラクターが出てくるが、その全員の演技も役割もすごい。どうやってつくったのか不思議に思う。

物語の終盤、紆余曲折あって刑事として復活したゴンゾウは、ついにバイオリニスト殺人事件の犯人へとたどり着くが、結果は敗北する。犯人は射殺され、そのときの強烈な死と敗北のイメージにゴンゾウはふたたび過去最大のトラウマに襲われ、再起不能の状態に陥る。彼は備品倉庫から拳銃を持ち出し弾をひとつ込めジャーっとやったあと引き金を引くが、撃鉄はならない。「わかったよ」と言って微笑む彼の目線の先には死んだ恋人の幻覚がいて彼女は階段を指差している。階段を上っていくと屋上があって彼はそこから飛び降りる、が死なない。彼は足首にその拳銃をくくりつけて食後や寝覚めやふとした瞬間にそのくるくるまわるところをジャーっとやって引き金を引く。「わかったわかった」と言って彼は微笑み、「俺は生かされているんだこんな素晴らしいことはない」と言って狂気におちていく。

というところで実は射殺された男は真犯人ではなく、本当の犯人は別にいるということが発覚し、その正体は絶対見ててもわからないと思う。真犯人が発覚するところで私はびっくりしてそこで続いたときめちゃくちゃかっこいいと思って来週が楽しみで仕方なかった。とにかくゴンゾウの最終回というのは、彼の足首の拳銃の、その意味というものが、いちばんわかりやすいかたちで、劇的に、この上ないかたちでかっこよく反転する。でなんの話をしていたのかというと結婚できない男だった。一人でそれを私は見ていると本当に入り込んでしまう。小学生のときに理解できなかったユーモアや孤独感や性欲や幸福感というもののすべてがあるような気がする